2014年3月31日月曜日

今日のスペイン語(12) 挨拶の常套句 その必要性

 このブログでは何回か、スペイン語圏で会議やセミナーに参加する時に使える常套句(型どおりの表現)を紹介している。今日は、どうしてこういう常套句を覚えておくことが、ビジネスマンに必須なのか、少々背景説明をしておきたいので、ちょっとの間おつきあい願いたい。
 
日本社会では、公式な行事の機会には、型どおりの挨拶が期待されている。あなたの会社が多数の人達を招いてセミナーを企画したが、あいにく当日雨天になってしまった。そんな時、わざわざ来て頂いた参加者に対して、司会者はまず「本日は足元の悪い中、ご参集頂きまして、誠にありがとうございます。」と挨拶する。日本の社会では、誰しも、どういう機会に、何を、どんな言い方で喋ったらよいのかは、仕事を通じて当然に学び、自然に口をついて出てくる。公式の場で、型どおりの言い回しの出来ることが、成熟したビジネスマンの証とみられることは、言うまでもない。まさか「天気悪いけど、来てくれたんだね。ありがとう」といったタメクチの挨拶をするような人はいないだろう。しかしこれがスペイン語となると、どうだろう。かなりスペイン語を学んだ筈の人であっても、日本語のように、口をついて咄嗟にでてくるだろうか。スペイン語を学ぶ日本人向けに、こういった表現を丁寧に説明してくれる教科書にはお目にかかったことがない。私自身も、かつてスペインに留学してスペイン語をかなり習得したつもりだったが、いざ公的な場で挨拶をする段になって、このような「型通りの挨拶」をするのに苦労した覚えがある。
 
 皆さんは、スペインや中南米で勤務し、公式な交渉会議やレセプションで、挨拶や乾杯の発声を求められることが多々あるに違いない。商売柄、私は会議やレセプションや講演会、工場開所式などの公の場にしょっちゅう招かれる。こういう場合、必ず前もって、挨拶や発声を期待されているのかどうか確認することとしている。挨拶の予定があれば、当然それなりの準備をして、緊張して本番に臨むこととなる。一方、自分の出番はないと確認し、安心して現場に赴き、ゆったりと構えていても、「本日は大使館からSr.Watanabeにお越しいただいているので、一言ご挨拶をお願いします」と指名されて、急に挨拶をするはめになるのも、実は日常茶飯事である。これは、日本大使館を代表して出席している私だけに降りかかってくる運命ではない。一緒に式典や会議に出席する日本企業の皆さんが同じく「突然のご指名」に逢っているのを、何回も目にしてきた。こういう時に、「突然のご指名ですので、きちんとしたお話もできませんがなどとは決して言ってはならない。突然の指名であっても、何十人、何百人の式典参加者はそんな事情を知らないのであり、もっと恐ろしいことに、貴方は日本政府(大使館)や所属企業の代表として挨拶しなければならないのである。こういう場では、大向こうをうならせるような大演説が期待されるのではなく、型通りの平凡な内容であっても、何よりもまずしっかりとした、恥ずかしくない挨拶が必要とされるのである。
 
そこで、このブログでは時々、私が過去に経験してきたいろいろな場面を念頭において、典型的な「型通りの挨拶」や常套句を紹介したい。もちろん、以下に掲げる他にも、いろいろな言い方があるし、個々人の好みや、流行り廃りもあるので、経験を積むにつれて、自分らしい「常套句」を作り上げていくのが理想的と思う。また、慣れてきたら、常套句に加えて、自分なりの得意のフレーズやネタを何通りか頭の中に用意しておくとよい。
 
以上をご理解の上、今後もおつきあい願いたい。
 
 

今日のスペイン語(11)  挨拶の常套句その1

 今日は、先日の続きで、会議やセミナー等の常套句を紹介する。

―「わが代表団は、本決議に際して棄権票を投じました。それは、基本原則はすべての諸国に同様に適用されるべきであるにもかかわらず、この決議は一部の国のみを対象としているためであります。」

(スペイン語訳) La delegación a la que pertenezco (Mi delegación) se ha abstenido en la votación de esta resolución, dado que la misma ha sido dirigida sólo a un grupo determinado de naciones, cuando el mismo principio debería ser aplicado a todas las naciones por igual.

(解説)ビジネス関係の会合では稀かもしれないが、文書の採択を目的とする会合では、どうしても参加者間の合意が整わない場合に、投票で採否を決することがある。典型的なのは国連の会議。採択予定の文書案に呑める部分も反対せざるを得ない部分もあって、白黒つけ難い時にどうするか。最後まで妥協案を探って皆の説得を試みるのだが、これが奏功しないまま投票に付されてしまったら、棄権するしかない。同時に、何故棄権せざるを得なかったかを説明するのを、業界用語でEOVexplanation of vote, スペイン語ではexplicación del voto。投票理由説明)という。私自身頻繁に体験したのは、何らかの国際紛争をめぐる国連の会議。筋としては当事者全てに対して自制を求めるべきなのに(と自分が考えていても)、一方の当事者のみを弾劾するような決議案が投票に付されてしまう場合。そういう時は棄権票を投じた後に挙手をして発言を求め、上記の投票理由説明をすることとなる。

 
 
―「すべての提案が出揃いましたので討論に移ります。これら案件を優先順位順に整理し、また重複するものを整理していきましょう。」
(スペイン語訳)Ahora que hemos anotado (またはlistado) todas sus sugerencias, quiero abrir la sesión para debatir estos problemas. Nuestra tarea será determinar el orden de dichos asuntos según su prioridad y eliminar los puntos repetidos.
(解説)会議の種類にもよるが、冒頭挨拶→数名の演説→質疑や討論→意見集約(文書の採択、議長や司会者による取り纏め発言等)→閉会というのが一般的な会議の流れ。

 
―「実施委員会の周到な企画と会議の円滑な運営に向けたご尽力に対して、感謝の念を表します。」
(スペイン語) Quisiera expresar nuestra gratitud al comité organizador por su cuidadosa planificación y sus incansables esfuerzos en pro de la buena marcha de la reunión.
(解説)会議の終わりには、参加者を代表する形で、最後のスピーカーとか最もシニアな人物(重鎮)が、会議の主催者の労をねぎらう挨拶をすることとなっている。

 
―「さて、ここでアンドラデ博士をご紹介します。アンドラデ博士は、糖尿病研究における成果により学会の注目の的となっています。」
(スペイン語) Ahora me complace presentarles al Dr. Andrade.(または“Permítanme presentar al Dr. Andrade.”) El Dr. Andrade ha llamado la atención de la comunidad académica por su éxito en la investigación de la diabetes.
(解説)会議やセミナーのゲストスピーカーが喋るのに先立って、行事進行係(大抵は司会者)は、そのスピーカーの簡単な略歴や業績を紹介する。上記はその冒頭部分のみ。会議の主催者は事前にスピーカーの略歴を取り寄せ、紹介の文言を整理し、必ず紙の形で手に持っていなければいけない。(人の紹介なので、万が一にも名前や出身校等の読み違いがないよう、紙に書いておくためである。)

 
―「ベルナル氏はその業績により国際的な名声を得ることとなりました。」
(スペイン語)Los logros del Sr. Bernal le han valido el reconocimiento internacional (または、han sido unánimemente reconocidos en todo el mundo).
(解説)一つ前の紹介文と同様、スピーカーの業績を称える際の、別の言い方。

 
―「これらお二方が如何に大きな貢献をされたかにつき、簡単にご紹介させていただきます。」
(スペイン語) Me gustaría presentarles brevemente las grandes contribuciones de los dos señores.
(解説)例えば、社内で永年勤続者表彰式を行う場合、受賞者の業績について参加者に説明する場合の前置き。日本語で「貢献をされた」と動詞句を使っていても、スペイン語に直す際には”contribución”という名詞に替えて訳する方が座りの良いことがある。逆もまた真なり。品詞にはあまり拘らないのが、より自然な訳を作る秘訣の一つ。

 
―「皆様、コボス氏よりお言葉を頂きます。それではコボス様、お願いいたします。」
(スペイン語) Señoras y señores, el Sr. Cobos va a dirigirles unas palabras. Sr. Cobos, por favor.

 
―「暖かいご紹介の言葉を頂き、ありがとうございました。本日のお招きを嬉しく思い、また光栄に感じています。」
(スペイン語)”Gracias por la cordial presentación. Es para mí un honor además de un placer poder estar aquí hoy.”
(解説)前述のとおり、スピーチをする演者の略歴や業績について司会者が丁寧に説明をするので、それを受けて登壇するスピーカーは、このように述べて感謝の意を表明するのがしきたり。定型句なので、そのまま覚えておけば、どんな状況でも使える。

 
―「当組織の正式会員に指名頂き、大変嬉しく存じます。」
(スペイン語) “Me siento muy feliz por haber sido nombrado miembro de pleno derecho de esta organización.
 (解説)海外勤務中に、ロータリークラブや有力財界人のクラブに入会すると、地元の名士と交流し人脈を広げる機会が飛躍的に増える。海外生活を充実させるためにも、そしてもちろんビジネスの観点からも、このようなクラブ入会はお奨め。駐在国により、またポストによっては、現地の商工会議所にex-officioで参加するしきたりかもしれない。いずれにせよ、晴れて正式会員になると、クラブの定例会合等で挨拶を求められる。先ず第一声は上記のとおりやっておけば間違いない。なお、クラブといっても、ゴルフクラブやテニスクラブの正式会員は、通常“miembro regular”と呼ばれる。

2014年3月30日日曜日

今日のスペイン語(10)  ケネディ語録

 今日は、ジョン・F・ケネディ第35代米国大統領の言葉をいくつか。1960年代に中学生以上の年齢だった方は国籍を問わず、ケネディ大統領のことを明瞭に記憶しているだろう。世界最強の国に現れた青年大統領、カトリック教徒として初の米国大統領、若々しく、未来を語った大統領、60年代に人類を月に送ると約束した大統領。そして63年ダラスで凶弾に倒れた悲劇の大統領。今では、ケネディ大統領の長女キャロライン・ケネディ氏が駐日大使となり、ケネディ家は日本で一層知名度を増している。彼の人生と彼の残した数々の言葉は、英語で、日本語で、そしてスペイン語で人々の記憶に残り、語り継がれている。
 

―「変化は生命の法則である。過去や現在しか見ない者は、未来において必ず失敗する者である。

(スペイン語) El cambio es ley de vida; cualquiera que sólo mire al pasado o al presente, se perderá el futuro.

(オリジナル)“Change is the law of life. And those who look only to the past or present are certain to miss the future.

 

―「我が同胞の皆さん、国家が皆さんのために何をしてくれるかを問うのでなく、皆さんが国家のために何ができるかを、自らに問いかけてください。世界中の同胞の皆さん、アメリカが皆さんのために何をしてくれるかを問うのでなく、我々が一緒に、人間の自由のために何ができるかを自ら問いかけてください。」

(スペイン語)"Mis compatriotas americanos, no se pregunten qué puede hacer su país por ustedes; pregúntense qué pueden hacer ustedes por su país. Mis compatriotas del mundo, no se pregunten qué va a hacer America por ustedes; pregúntense qué podemos hacer juntos por la libertad del hombre. "

オリジナルMy fellow Americans: ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country. My fellow citizens of the world: ask not what America will do for you, but what together we can do for the freedom of man.

(解説)あまりに有名な、1961年1月20日のケネディ大統領就任演説。当選したばかりであったにせよ、新しい大統領に多くの期待を抱いている国民(有権者)を前にして、なかなか言える言葉ではなかろう。

 

―「成功には千人の父親がいる。だが、失敗は孤児である。」

(スペイン語)“El éxito tiene muchos padres; el fracaso es huérfano.

(オリジナル)“Victory has a thousand fathers, but defeat is an orphan.

 

「恐れるが故に交渉をしてはいけない。しかしまた、交渉を恐れてはならない。

スペイン語)“Jamás negociemos por miedo, pero jamás temamos negociar.

オリジナルLet us never negotiate out of fear. But let us never fear to negotiate.

 

2014年3月29日土曜日

今日のスペイン語(9)  人道に対する犯罪

 今日のスペイン語というからには、いわゆる時事用語も話題にしようと考えた。スペイン語の辞書に未だ載っていない時事用語を中心に、紹介していきたい。今日の用語は「人道に対する犯罪」(「人道に対する罪」とも呼ばれる)。
 
 
「人道に対する犯罪」(crímenes contra la humanidad

(例文)“El Consejo de Derechos Humanos de las Naciones Unidas aprobó una resolución sobre la situación de los derechos humanos en Corea del Norte. En esta resolución presentada por Japón y la Unión Europea se declara que los secuestros y las violaciones de los derechos humanos en cárceles norcoreanas constituyen crímenes contra la humanidad.”

(訳)国連の人権理事会は、北朝鮮の人権に関する決議を採択した。日本とEUが提出したこの決議では、拉致や北朝鮮の監獄における人権侵害が「人道に対する犯罪」にあたるとしている。

(解説)「人道に対する犯罪」は、2002年に発効した、国際刑事裁判所を設立するローマ規程で明文化された。文民に対する組織的な殺人、奴隷化、追放、拷問、迫害等をいう。英語ではcrimes against humanity

 2014年2月に、スペインの全国管区裁判所が国際刑事警察機構に対して、人道に対する犯罪などを理由に、中国の江沢民元国家主席や李鵬元首相等の国際手配を要請したと報じられていたのが、記憶に新しい。

 今回の北朝鮮人権状況に関する決議は、3月28日にジュネーブの国連人権理事会で採択されたもので、投票結果は賛成30、反対6、棄権11。

賛成は、アルゼンチン、豪州、ベナン、ボツワナ、ブラジル、ブルキナ・ファソ、チリ、コスタ・リカ、コートジボワール、チェコ、エストニア、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、カザフスタン、モルジブ、メキシコ、モンテネグロ、モロッコ、ペルー、フィリピン、韓国、ルーマニア、シエラレオーネ、マケドニア、アラブ首長国連邦、英国、米国。

反対は、中国、キューバ、パキスタン、ロシア、ベネズエラ、ベトナム

棄権は、アルジェリア、コンゴ、エチオピア、ガボン、インド、インドネシア、ケニヤ、クウェ-ト、マレーシア、サウジアラビア、南アフリカ。

 

2014年3月27日木曜日

今日のスペイン語(8)  孫子の言葉

 今日は、中国の古典「孫子」から。ご存じのとおり孫子の兵法は、日本では兵学書というよりむしろ自己啓発書やビジネスの指南書として知られており、「孫子の兵法」とか「孫子に学ぶ」的な書籍が多い。スペイン語圏でも同様で、”Sun Tzu(孫子)“El Arte de la Guerra”といったタイトルの書籍は、Casa del LibroFnacといった大型書店、El Corte Inglésのようなデパートの書籍コーナーはもとより、地方都市の書店でも山積みになっているのをしょっちゅう見かける。立ち読みでいくつかのこれら書籍に目を通したところ、必ずしも全ての本で同じスペイン語訳になっている訳ではないが、少なくとも以下に記す表現であれば十分に汎用性がある。

なお、私の立ち読み経験では、スペイン語版の「孫子」は、どの本もそれなりにちゃんと訳されているのだが、どうもしっくりこない。漢文(読み下し文)であれば、声を出して読むと精神の奥底まで浸み込むように感じるが、気のせいだろうか。既に孫子を精読されている方は、スペイン語圏で一冊仕入れて日本語版と読み比べてみてはいかがだろうか。なお、以下の日本語訳は「孫子」(2000年、岩波文庫。金谷治訳注)によった。

 

―「戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。」

El supremo arte de la guerra es someter al enemigo sin luchar.

 

―「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む。」

Un ejército victorioso gana primero y entabla la batalla después; un ejército derrotado lucha primero e intenta obtener la victoria después.

 

―「彼れを知りて己れを知れば、百戦して殆うからず。彼れを知らずして己れを知れば、一勝一負す。彼れを知らず己れを知ざれば、戦う毎に必ず殆し。」

Si conoces a los demás y te conoces a ti mismo, ni en cien batallas correrás peligro; si no conoces a los demás, pero te conoces a ti mismo, perderás una batalla y ganarás otra; si no conoces a los demás ni te conoces a ti mismo, correrás peligro en cada batalla..

 

―「其の疾きことは風の如く、其の徐かなることは林の如く、侵掠することは火の如く、動かざることは山の如く」

Cuando una fuerza militar se mueve con rapidez es como el viento; cuando va lentamente es como el bosque; es voraz como el fuego e inmóvil como las montañas.

 

今日のスペイン語(7)  アドルフォ・スアレス語録

 今月23日、アドルフォ・スアレス(Adolfo Suárez González)元スペイン首相が亡くなった。享年81歳。1975年にフランコ総統が死去してからの民主化過程(transición democrática)で大役を果たし、特に76年から81年にかけて首相(Presidente del Gobierno)を務めた間に、民主的選挙の実施や憲法制定等多くの業績を残したことで知られる。スペインの民主化を成し遂げた最大の功労者と評価され、ここ数日スペインの報道は故スアレス首相特集を組み、追悼記事を多く載せている。スペインは、フランコ体制から見事に民主化を成し遂げた国として知られており、特にスアレス氏現役時代のスペイン政治情勢には、私自身数々の思い出がある。今日は、スアレス語録の中でも殆どのスペイン人が覚えている名科白をいくつかお届けしたい。
 
--"Hay algo que ni siquiera Dios pudo negar a los hombres: la libertad."


(訳)たとえ神でも、人間から奪うことのできなかったものがある。それは自由だ。
(解説)スアレス氏はもちろんカトリックである。フランコ体制直後、依然としてキリスト教が国民生活の中に浸透しており、教会の影響力が絶大であった時期に、神との比較で自由への希求をこのような表現で公言するのは、大変勇気のある行動であったに違いない。

 
--”El futuro no está escrito, porque sólo el pueblo puede escribirlo.”

(訳)(我々の)未来は既に決まっているのではない。未来を作るのは人民である。

(解説)”está escrito.”は、聖書にある表現(Escrito está.)で、(人間や世界の)運命は既に神によってシナリオが全て決められており、それは聖なる書に書かれているという意味。スペイン語版新約聖書のマタイによる福音書に、イエスの言葉として、みなさんよく御存じの、次の記述(人はパンのみにて生きるものに非ず)がある。

Escrito está: ``NO SOLO DE PAN VIVIRA EL HOMBRE, SINO DE TODA PALABRA QUE SALE DE LA BOCA DE DIOS.

 脇道に逸れてしまうが、外国映画でよく”It is written.”という科白が出てくる。これも同じこと。記憶に新しいのは、スラムドッグ・ミリオネア。ムンバイに住む貧しいジャマルがクイズ番組に出演して正解を重ね、いよいよ最後の問いに正解すれば2000万ルピーを手にできる。実は、映画の冒頭、スクリーンに「何故彼(ジャマル)はここまで来れたのか?」という(観客に対する)クイズが現れる。4択形式で、「ずるをしたから」、「ラッキーだったから」、「彼は天才だから」、または「運命だから(It is written.)」のいずれが正解でしょうか?という問いかけである。答えの知りたい方は映画を観ましょう。

 
--Un político no puede ser un hombre frío. Su primera obligación es no convertirse en un autómata. Tiene que recordar que cada una de sus decisiones afecta a seres humanos. A unos beneficia y a otros perjudica. Y debe recordar siempre a los perjudicados..."

(訳)政治家は冷酷であってはならない。彼の最も大切な務めはロボットになることではなく、彼の下す決定の一つ一つが人々に及ぼす影響を忘れないことである。その決定で恩恵を得る人も損害を被る人もいる。彼は、この損害を受ける人達に思いを致さなければならないのである。
(解説)コメントの必要もないほど当たり前のことだが、いい言葉だなあ。

 
--"La vida siempre te da dos opciones: la cómoda y la difícil. Cuando dudes elige siempre la difícil.”

(訳)人生ではいつも2つの道が示される。安易な道と困難な道である。(いずれを選ぶか)迷ったら、常に困難な道を選びなさい。

(解説)スアレス氏は、43歳の若さで首相就任を要請された時、首相になってから国内和解や地方分権等の難しい問題に対して決断を下してきた時、当時の状況を想像するに、彼の選んだ道は本当に困難な選択肢だったと思う。常人にはなかなかできることではない。

 

--"La transición española dará un ejemplo al mundo".

(訳)スペインの民主化は、世界の模範例となるであろう。
(解説)世界の他地域、他諸国で民主体制への移行が行われてきたが、多くの諸国で困難を抱えている。スペイン国内にも、今でもいろいろな意見があり、さまざまな思いを持つ人がいるのだろうが、世界地図を俯瞰して多くの事例を比較すると、スアレス氏の言った通りと思う。

2014年3月25日火曜日

今日のスペイン語(6)  恒久平和への誓い

 これから時々、最近話題のテーマについても、「今日のスペイン語」で取り上げていきたい。第一弾は、昨年12月末に出された「安倍内閣総理大臣の談話  ~恒久平和への誓い~」のスペイン語訳。外務省のホームページには、英語、フランス語、スペイン語をはじめ多くの言語訳が記載されているが、ここにアップしたのは、私なりに訳した渡邉版。

言うまでもなく、これは日本や世界にとって非常に大事なテーマ。少々長いかもしれないが、正確を期し、推敲を重ねたスペイン語訳なので、じっくりと熟読していただきたい。

 

安倍内閣総理大臣の談話
~恒久平和への誓い~

平成251226

 本日、靖国神社に参拝し、国のために戦い、尊い命を犠牲にされた御英霊に対して、哀悼の誠を捧げるとともに、尊崇の念を表し、御霊安らかなれとご冥福をお祈りしました。また、戦争で亡くなられ、靖国神社に合祀されない国内、及び諸外国の人々を慰霊する鎮霊社にも、参拝いたしました。

 御英霊に対して手を合わせながら、現在、日本が平和であることのありがたさを噛みしめました。

 今の日本の平和と繁栄は、今を生きる人だけで成り立っているわけではありません。愛する妻や子どもたちの幸せを祈り、育ててくれた父や母を思いながら、戦場に倒れたたくさんの方々。その尊い犠牲の上に、私たちの平和と繁栄があります。

 今日は、そのことに改めて思いを致し、心からの敬意と感謝の念を持って、参拝いたしました。

 日本は、二度と戦争を起こしてはならない。私は、過去への痛切な反省の上に立って、そう考えています。戦争犠牲者の方々の御霊を前に、今後とも不戦の誓いを堅持していく決意を、新たにしてまいりました。

 同時に、二度と戦争の惨禍に苦しむことが無い時代をつくらなければならない。アジアの友人、世界の友人と共に、世界全体の平和の実現を考える国でありたいと、誓ってまいりました。

 日本は、戦後68年間にわたり、自由で民主的な国をつくり、ひたすらに平和の道を邁進してきました。今後もこの姿勢を貫くことに一点の曇りもありません。世界の平和と安定、そして繁栄のために、国際協調の下、今後その責任を果たしてまいります。

 靖国神社への参拝については、残念ながら、政治問題、外交問題化している現実があります。

 靖国参拝については、戦犯を崇拝するものだと批判する人がいますが、私が安倍政権の発足した今日この日に参拝したのは、御英霊に、政権一年の歩みと、二度と再び戦争の惨禍に人々が苦しむことの無い時代を創るとの決意を、お伝えするためです。

 中国、韓国の人々の気持ちを傷つけるつもりは、全くありません。靖国神社に参拝した歴代の首相がそうであった様に、人格を尊重し、自由と民主主義を守り、中国、韓国に対して敬意を持って友好関係を築いていきたいと願っています。

 国民の皆さんの御理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

(出典:外務省ホームページ)

 

スペイン語訳(渡邉優訳)

  Hoy he visitado el Santuario Yasukuni y he expresado mis sinceras condolencias y mi respeto, y he rezado por las almas de todos aquellos que lucharon por el país con gran sacrificio. Asimismo he visitado el monumento funerario Chinreisa para rezar por las almas de todos, japoneses y extranjeros, que perdieron la vida en la guerra y su alma no está descansando en el Santuario Yasukuni.

  Mientras rezaba por las almas de los fallecidos en la guerra, estaba agradeciendo profundamente la paz de la que Japón disfruta hoy día.

  La paz y la prosperidad de las que goza Japón en el presente no se deben solamente a
los que vivimos hoy. La paz y la prosperidad de las que disfrutamos hoy se han construido
sobre el digno sacrificio de numerosas personas que perecieron en el campo de batalla,
deseando la felicidad de sus queridas esposas e hijos y pensando en los padres y las madres que los habían criado.

  Hoy, durante mi visita, he reflexionado sobre todo esto y les he rendido mi más profundo
respeto y gratitud.

  Japón nunca más debe volver a embarcarse en una guerra; estoy convencido de ello basándome en los fuertes remordimientos por el pasado. Ante las almas de los caídos he renovado mi determinación de defender con firmeza el compromiso de no volver a hacer la guerra nunca.

  Al mismo tiempo he jurado que construiremos una era sin sufrimientos debidos a la devastación de las guerras y que Japón seguirá siendo un país que aúne sus esfuerzos con los amigos de Asia y del mundo entero para lograr la paz.

  Durante 68 años de posguerra, Japón ha creado un país libre y democrático sin desviarse
del camino de la paz. No hay ninguna duda de que seguiremos por este camino. Japón cumplirá con sus responsabilidades por la paz, la estabilidad y la prosperidad del mundo en el espíritu de la cooperación internacional.

  Lamento que alrededor de esta visita se hayan creado problemas políticos y diplomáticos.
Hay personas que critican la visita traduciéndola como un homenaje a criminales de guerra.

Pero la verdad es que mi visita ha sido para renovar el compromiso por la construcción de una era sin sufrimientos por la devastación de las guerras y para presentar nuestro trabajo al cumplir el primer aniversario en el Gobierno.

  No es mi intención en absoluto herir los sentimientos de los pueblos chino y coreano.
Deseo respetar la dignidad de cada uno, abogar por la libertad y democracia y cultivar la
amistad con China y Corea con todo el respeto, como hicieron los anteriores Primeros
Ministros que visitaron el Santuario Yasukuni.

  Me gustaría contar con su comprensión.