2014年12月23日火曜日

今日のスペイン語(249)  ドン・キホーテ

 

スペイン語を学ぶ以上、セルバンテス(Miguel de Cervantes)のドン・キホーテ(Don Quijote de la Mancha)を知らない人はいないだろうが、この作品をスペイン語で読み通した人も多くはないと思う。ここでは、冒頭だけ、摘み食いしてみよう。最初と最後だけでも頑張って暗記し、スペイン人の前で口ずさめば、拍手喝采で、大変尊敬されるのは確実である。

(前編の冒頭:オリジナル)
  En un lugar de la Mancha, de cuyo nombre no quiero acordarme, no ha mucho tiempo que vivía un hidalgo de los de lanza en astillero, adarga antigua, rocín flaco y galgo corredor. Una olla de algo más vaca que carnero, salpicón las más noches, duelos y quebrantos los sábados, lentejas los viernes, algún palomino de añadidura los domingos, consumían las tres partes de su hacienda.

(日本語:渡邉訳)
 さほど昔でない頃のことだが、地名も思い出したくないラマンチャの或るところに、槍を槍かけに備え、旧式の盾、駄馬と猟犬を持つ、典型的な郷士が住んでいた。食事といえば、羊より少々牛肉の多い鍋物、普段の夕食には肉の野菜炒め、土曜日には塩豚と卵の炒めもの、金曜日にはレンズ豆、日曜日はそれに加えて小鳩程度で、財産の四分の三はこれに費やされていた。

 
(解説)
 スペイン語を学ぶからには、セルバンテスの最高傑作ドン・キホーテを避けて通る訳にはいかない。とはいえ、ドン・キホーテは実にvoluminosoである。ドン・キホーテが未だ郷士(hidalgo)の頃の前編、騎士(caballero)になってからの後編と合わせて、私の持つ本で1,500ページ以上に上る。しかも、ハリーポッターと違って、17世紀のスペイン語は実に重い。

 そこで、沢山出版されている日本語訳やダイジェスト版を通読されるよう、お薦めする。実に面白い。また、映画や芝居にもなっているので、ご覧になれば大いに楽しんでいただけると思う。スペイン語でも、子供向けの絵本や短縮版・現代語版が多く出ており、こちらの方は随分と読みやすい。ドン・キホーテの表現には、今でも生きているものが多いので、実生活でも大いに役立つ。なお、(17世紀スペイン文学の専門家ではない私の訳は、かなり適当なので、あまり頼りにしないこと。)


 

2014年12月21日日曜日

今日のスペイン語(248)  リニア中央新幹線の着工


 世界最先端の日本テクノロジーを使ったリニア新幹線が、いよいよ着工となった。関連情報を簡単にまとめたのでスペイン語での発信に活用しよう。

(日本語)
 12月17日、JR東海は、リニア中央新幹線の建設工事を開始した。2027年には、東京(品川)・名古屋間の路線が開業する。この新幹線は、最高時速500キロ・メートルで走り、東京・名古屋間286kmの所要時間は、現在の新幹線の半分以下である40分に短縮される。

この新幹線で使われる超電導リニアは、車両に搭載した超電導磁石と地上に取り付けられたコイルとの間の磁力によって、車両が浮上して走行する。2003年には、陸上交通機関の世界最高速度記録となる時速581kmを達成した。

 
(スペイン語訳)
 El 17 de diciembre JR TokaiCompañía Central de Ferrocarriles de Japón) comenzó la construcción del tren bala lineal Chuo. Se espera que en 207 empiece el servicio entre Tokio (la estación de Shinagawa) y Nagoya. Este nuevo tren bala corre a una velocidad máxima de 500 kilometros por hora, y se acorte el tiempo de viaje entre Tokio y Nagoya; 286 kilometros, en 40 minutos, menos de la mitad del actual tren bala.

Con el sistema de superconductor lineal utilizado en este tren, el vehículo corre sin tocar el suelo, por la fuerza magnética que existe entre las bobinas del suelo y los imanes superconductores ajustados al vehículo. En 2003 logró una velocidad de 581 kilómetros por hora, récord mundial de velocidad del transporte terrestre.

 
(解説)
 日本ではリニア新幹線またはリニア・モーター・カーと呼ばれることが多いが、各国では英語の“magnetic levitation train”または略して“maglev”という呼称が使われる場合が多いようだ。スペイン語でもその影響で、“tren de levitación magnética”が一般的だが、本項では、リニア中央新幹線という固有名詞なので、あまり日本語と離れないように訳してみた。

 品川―名古屋間が40分というのは驚異的な速さである。各国で同じような距離の都市間移動時間を比較すると、びっくりされるだろう。(例えばスペインのマドリード・サラゴサ間が300km強。)

2014年12月20日土曜日

今日のスペイン語(247)  スペイン語のジョーク その7

 グリーンピースがペルーのナスカ(世界遺産)に不法侵入して狼藉を働いた事件を知って、アルゼンチンの友人から聞いたグリーンピース・ジョークを思い出した。

(スペイン語)
Dos jóvenes madres conversan.
-- Escuché a la gente de Greenpeace que piden a las madres que no usemos más los pañales descartables y que volvamos a los antiguos pañales de tela. ¿Tú qué opinas?
--Yo estaría de acuerdo si los de Greenpeace vienen a casa, a lavarlos.

(日本語訳)
若い母親達の会話。
―グリーンピースが、世の中の母親達に、紙おむつをやめて昔のように布おむつを使いなさいって言ってるけど、どう思う?
―グリーンピースが家に来ておむつを洗ってくれるのなら、いいじゃない。

(解説)
1 最初の母親が言う“Escuché”は、アルゼンチンならではの表現。スペインでは“escuchar”は一生懸命に耳を傾けて聞くニュアンスなので、この文脈では“oir”(耳にする、聞こえてくる)が使われるのではないか。また、動詞の時制でも、アルゼンチンでは直近の過去についても単純過去形を使うが、スペインでは過去完了形を使って”He oído.”となるだろう。

2 このジョークは、人に意見するだけで、自分では汗を流さないという印象の強い人達に対する痛烈な皮肉である。NGOには2種類あって、一つは国境なき医師団のように、自ら現場に乗り込み、命を賭けて支援活動をするもの。もう一つは、主義主張の発信に主眼を置くもの。後者のNGOに対しては、時に厳しい批判が聞かれる。グリーンピースも、再生可能エネルギーへの積極的投資、世界遺産保存のための基金設立、(排気ガスを減らすための)自転車の無償配布、鯨の養殖技術開発や布おむつ洗いなどに取り組んでいれば、こんなジョークのやり玉には上がらなかっただろう。

2014年12月18日木曜日

今日のスペイン語(246)  iPS細胞の移植手術

 英国の科学雑誌Natureが、今年に際立った業績を上げた世界の科学者10人を選んで特集記事を組んだが、iPS細胞の移植手術を行った理化学研究所の高橋政代氏がその一人に選ばれた。関連情報を纏めてスペイン語に訳してみた。

(日本語)
 12月17日、英国の科学雑誌ネイチャーは、「365 days: Nature's 10  Ten people who mattered this year」と題した特集記事を公表した。これは、2014年に科学分野で際立った成果を残した10人を紹介するもので、日本からは理化学研究所の高橋政代氏が選ばれた。

今年9月、高橋氏は、眼病を患う70代女性のiPS細胞から網膜細胞を作り、これを同女性に移植した。彼女10年間にわたって幹細胞を利用した網膜損傷の修復を研究してきたが、2006年からは、iPS細胞を発見したノーベル賞受賞者である山中伸弥教授と協力してきた。


スペイン語
 El 17 de diciembre, la revista científica británica “Nature”,  publicó un artículo especial titulado "365 días: Los 10 de Nature, las diez personas más importantes del año.” Este artículo trata de las diez personas que dejaron los logros más destacados en la ciencia en 2014. Este año se encuentra entre los diez la Sra. MasayoTakahashi del Instituto de Investigación Física y Química (RIKEN) de Japón.
 En septiembre de este año la Dra. Takahashi produjo células de retina desde las células iPS de una mujer en los 70 que sufre de una enfermedad en los ojos, y se las trasplantó a la misma mujer. Takahashi venía estudiando la reparación de daños de la retina con células madre en los últimos diez años. A partir de 2006 está colaborando con el Profesor Sinya Yamanaka, ganador del Premio Nobel que descubrió las células iPS.

(解説)
1 iPS細胞は日本語でも英語でもスペイン語でも定着しているが、念のためスペイン語で説明すると、Células Madre Pluripotentes inducidas, abreviadas como células iPS por sus siglas en inglés: "induced Pluripotent Stem"といったところだろう。

2 科学雑誌として権威あるNatureが選んだ「Nature’s 10」。スペイン語の勉強とはあまり関係ないが、時勢に遅れないため、一応目を通しておきたいところ。各自氏名の後に記されているのはNature誌が付した「肩書き」(例えば高橋氏はstem-cell tester=幹細胞実験者)。

(1)Andrea AccomazzoComet chaser。 欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査「ロゼッタ計画」のディレクター

(2) Suzanne TopalianCancer combatant。 がん免疫療法を研究室から臨床現場へ移行させるのに極めて重要な研究を行った。(米国ジョンズホプキン大学院)

(3) Radhika NagpalRobot-maker。 人工知能およびロボット工学の急速な進歩に貢献した。(米国ハーバード大学)

(4) Sheik Humarr KhanEbola doctor。 シエラレオネでエボラ出血熱の解明と感染拡大防止に一生を捧げ、7月に自身がエボラで亡くなった。(シエラレオネ・ケネマ国立病院)

(5) David SpergelCosmic sceptic 誕生直後の宇宙で生じた重力波を発見したとする報告の問題点を明らかにした。(米国プリンストン大学)

(6) Maryam MirzakhaniSurface explorer 数学の世界で最も権威のあるフィールズ賞を女性として初めて受賞した数学者。(米国スタンフォード大学)

(7) Pete Frates: Ice-bucket challenger 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者で、ソーシャルメディアを通じてアイス・バケツ・チャレンジを今年の社会現象にまで広げた。

(8) Koppillil RadhakrishnanRocket launcher インド宇宙研究機関(ISRO)のトップで、火星探査ロケット開発に貢献した。

(9) 高橋政代:Stem-cell tester iPS細胞を使用して加齢黄斑変性治療のための初の臨床試験を行った。(理化学研究所)

(10) Sjors ScheresStructure solver。 低温電子顕微鏡を使った一連のリボソーム研究等で注目された。(英国MRC分子生物学研究所)

2014年12月17日水曜日

今日のスペイン語(245)  スペイン語のジョーク その6

 その昔、スペインで友人から聞いたジョーク。うろ覚えなので日本語から再現してみた。

(日本語)
 若い独身女性が骨董品店でランプを買った。自宅できれいに拭いていると、突然ランプの中から魔神が現れて言うには、「願いごとを一つかなえてやろう。」大変真面目なその女性は、「世界中の国が民主的になってほしいわ」。
 魔神は困った顔をして、「俺は魔神だが、出来ないこともあるんだよ。もっと現実的な願いはないのか?」
 女性:「じゃあ、素敵な男性と結婚したいわ。」
 魔神:「そりゃ簡単だ。どんな男性がいいのかな?」
 女性:「背が高くてハンサムで、安定した大企業に勤めて、収入が多くて、真面目で、お酒もタバコも博打もやらず、ゴルフもしないで、無駄使いはしないで、他の女性に目もくれず、会社帰りに友人と遊びに行かず、家では週末も朝早く起きて、掃除と料理を手伝ってくれて、子供を学校に連れて行って、それから
 魔神:「ちょっと待ってくれ。最初の願いは何だっけ?民主化?そちらの方をちょっと考えてみよう。」

 
スペイン語
 Una joven soltera compró una lámpara en una tienda de antigüedades. Cuando limpiaba la lámpara en casa, salió de repente un genio.
 Dice el genio: "Te voy a conceder un deseo."
 La chica, siendo muy sincera, le pide al genio: "Que todos los países del mundo sean democráticos. "   El genio le contesta con cara de preocupación: "Yo soy genio, pero hay cosas que yo no sería capaz de cumplir. ¿No tienes otro deseo más realista?"   A lo que la chica contesta: Bueno, quiero casarme con un buen hombre."   Genio: "Ja, ja! Es fácil. ¿Qué tipo de chico?"
 La chica: "Quiero un chico alto y guapo, que trabaje en una empresa grande y estable, tenga muchos ingresos, sea muy serio, no tome alcohol ni cigarrillos, nunca se meta en juegos de azar, no juege al golf, que no sea gastador, no de ni una ojeada a otras mujeres, no salga con los amigos de juerga después del trabajo, se levante temprano todos los días, digo los fines de semana también, me ayude a limpiar y cocinar, y lleve a los niños al cole, y... "   Genio: "Espera, espera. ¿Cuál ha sido el primer deseo? ¿Democratización?  A ver si puedo hacer algo en ello.

 
(解説)
1 アラジンの魔法のランプのパロディであることは、お気づきの通り。ランプから煙とともに出てくる摩神のことをスペイン語ではgenioと呼んでいる。

2 理想的な男性(人生の伴侶)を見つけるのは、魔神にも出来ない難事である。このジョークは、一見簡単に思えること(第二の願い)が、実は、一般に実現が難しいと考えられていること(最初の願い)よりも難しいというパターン。最初の願いと第二の願いにバリエーションを加えることで、様々なバージョンが出来そうだ。例えば最初の願いには中東紛争、テロ撲滅、地球温暖化対策等、第二の願いの方は禁煙、減量や担当商品の売上げ倍増等と差し替えても使えそうだ。
 また、ランプを買ったのが男性で、理想の女性を妻に迎えたいと願うバージョンもあるだろうが(料理が上手くて、家事をすべて任せられて、毎日肩を揉んでくれて...等々)、女性の面前でそういうジョークを飛ばすのは、私にはできない。

2014年12月16日火曜日

今日のスペイン語(244)  クリスマスの映画

 世界中で、クリスマス・シーズンに合わせ、クリスマスを話題にした映画が封切られることが多い。中には長年にわたって人気を保っている作品もある。英語圏では、(ディケンズ原作の)クリスマスキャロル、ホーム・アローン、34丁目の軌跡、Love Actually等々、有名なクリスマス映画が多く知られているが、今日は、名作スペイン語クリスマス映画をいくつか紹介したい。特にスペイン語圏にお住まいの方は、是非DVDを借りるなどしてご覧になることをお薦めする。
 
1 Plácido
 1961年。スペイン映画の巨匠Luis García Berlanga監督の作品。Plácidoは主人公の名前。或るスペインの田舎で、金持ちが貧しい人を自宅のクリスマス・ディナーに招こうという気まぐれを思いつくが、貧しい主人公はそれどころではなく、商売道具のスクーター(motocarro)代金支払いに奔走せざるを得ない...。白黒映画だが、30年以上昔に観た場面が鮮明に記憶に残っている感動作品。

 La Gran Familia
 1962年。Fernando Palacios監督の作品。15人の子供達を抱える文字通り大家族の話。これも白黒。当時のスペインの人達の生活がよく伝わってくる。クリスマスになるとマドリードの大広場(La Plaza mayor)に出店が沢山現れてアメ横のようにごった返すが、そこで一番下の子供がいなくなってしまう... 。 物凄い人気作品で、その後30年近くにわたって続編が出され続けた。

3 La primera noche de mi vida
 1998年。Miguel Albaladejo監督の作品。1999年の12月31日夜、大晦日を妊娠中の妻の両親宅で過ごそうとするカップルだが、義父の(少々悪意の)介入もあって、歯車がかみ合わなくなり、泥棒やら警官やら不法移民やら、種種雑多な人達が出てきて、話がますます込み入るというコメディー。

 El día de la Bestia
 1995年、Álex de la Iglesia監督の作品。当時は新進気鋭の、「一風変わった映画を撮る」監督として売り出していた頃。冒頭、教会内で神父が神に祈る場面から始まるが、いきなり「エグイ」。ほんわり暖かいクリスマス映画ではない。敢えてジャンル分けするとホラー・コメディ-か。こんな監督だが、スペイン映画芸術科学アカデミーの会長を務めたこともある、大物になってしまった。

2014年12月15日月曜日

今日のスペイン語(243)  COP20

 12月15日、ペルーのリマで開かれていた気候変動枠組条約の第20回締約国会議(COP20)が終了した。来年、京都議定書と異なり全ての国が参加する新たな合意作りが期待されているが、そもそもCOPとは何か、今次会議のオフィシャルサイトを元に解読してみよう。

(スペイン語)¿Qué es la COP?
 La Convención Marco de las Naciones Unidas sobre el Cambio Climático (CMNUCC o UNFCCC por sus siglas en inglés) entró en vigor en 1994,con el objetivo de reducir las concentraciones de gases de efecto invernadero (GEI) en la atmósfera. La Conferencia de las Partes (COP por sus siglas en inglés) fue designada como el órgano supremo de la Convención.

A la fecha, 195 países han presentado sus instrumentos de raticación.Estos se reúnen una vez al año, por dos semanas, para examinar la aplicación de la Convención y desarrollar el proceso de negociación entre las Partes ante nuevos compromisos.http://www.cop20.pe/acerca-de-la-cop-20/

 
(日本語)COPとは何か
 国連気候変動枠組条約CMNUCC。英語の略称はUNFCCC)は、大気中の温室効果ガス(GEI)の濃度を減らすことを目的として、1994年に発効した。締約国会議(英語の略称はCOP)が、この条約の最高機関とされた。

現在までに、195ケ国が批准書を寄託している。これら諸国は、この条約の適用状況を検討し、新たなコミットメントに関する締約国間の交渉プロセスを進展させるため、毎年1回、2週間にわたって会合する。

(解説)
1 多数国間条約を締結する際、その条約で各国が約束した事項の進捗状況を点検したり、条約交渉で積み残しとなった案件のフォローップをするため、締約国間の会合を開く仕組みとすることがある。これを英語でConference of the Partiesと呼び、その略称COPがスペイン語でも日本語でも普及している。第一回締約国会議はCOP1、二回目はCOP2、20回目になるとCOP20と呼ばれる。最近の国際条約はCOPの仕組みを作るのが流行になっており、COPだけでは、何の条約の締約国会議がわからない。

2 el órgano supremoは最高機関。「国会は国権の最高機関である」という時に使われる単語。ある組織や条約の運営にあたって意思決定をする場合、委員会やワーキンググループ等が設けられるが、正式かつ最終的な決定はこの最高機関で行われる。

3 instrumento de ratificaciónは、批准書。国連の国際条約の締約国となるため、国連に対して、この批准書を寄託するという手続きが踏まれる。