2015年5月22日金曜日

今日のスペイン語(325)  五箇條の御誓文

     
 先週、明治記念館で或る会議に出席した際に、同館のサービスで五箇條の御誓文を頂いた。改めて読み返したら、明治近代国家建設の決意が心に沁み込む思いがしたので、機会があれば海外の方にも紹介したいと考えて、誠に僭越ながら私なりにスペイン語に訳してみた。


(日本語原文)(ただし現代語仮名遣い)
―広く会議を興し万機公論に決すべし。
上下心を一にして盛に経綸を行うべし。
官武一途庶民に至る迄、各其志を遂げ、人心をして倦ざらしめん事を要す。
旧来の陋習を破り天地の公道に基くべし。
智識を世界に求め大に皇基を振起すべし。


(スペイン語訳)
Se establecerán extensamente asambleas deliberantes y todos los asuntos importantes serán decididos por discusión abierta.

Todas las clases sociales, altas y bajas, deberán dedicarse activamente y unidas a la administración de los asuntos del Estado.

Es esencial que los funcionarios civiles y militares, así como la gente común, puedan lograr su propia vocación y que no haya ningún descontento.

Las malas costumbres del pasado serán desechadas y se basará todo en las razones universales.

El conocimiento se buscará en todo el mundo con el fin de fortalecer las bases del gobierno imperial.

(解説)
1 五箇條の御誓文は、1868年、明治天皇が天地神明に誓約するという形で打ち出された、明治新政府の基本方針である。正式には「御誓文」という。スペイン語に訳せば、”Juramento del Emperador”。神に誓うので、日常会話と違ってjuramentoとするのが正しい。

 ところで、天皇=emperadorは既に定訳となっており、翻訳や通訳をする際にはそれに従うのが安全なのだが、私自身は、本来、スペイン語にも英語にも対応する訳は存在しないと考えている。スペイン語の“emperador”も英語の“emperor”も、ラテン語の“imperator”が語源で、元々古代ローマの軍司令官を意味していたが、その後は初代皇帝のアウグストゥス以降のローマでも、その後の欧州諸国でも、軍司令官を超えて、あらゆる面で国家を半ば独裁的に運営する最高指導者を(形ばかりの神聖ローマ皇帝という役職はあったものの、少なくとも字義の上では)意味してきた。だから、歴史的経緯も実態も異なる日本の天皇を“emperador”と訳すのには、昔から違和感を抱いてきた。
 閑話休題。

2 五箇條の御誓文は「旧来の陋習を破り」などと書かれているものの、じっくり読むと、新政府になってまったく新しい方針を突然打ち出したというより、実は、永い間をかけて培われてきた、伝統的な日本の国情や精神を反映しているのではないか、と感じる。

3 なお、 このスペイン語訳文の表現も、その前提となる原文の解釈も私個人の判断によるもので、公的な解釈や翻訳がある訳ではない。

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