2014年10月30日木曜日

今日のスペイン語(217)  TPPの交渉分野 その14 


14電子商取引Comercio Electrónico

(日本語)
 近年、電子商取引市場は急成長しており、今後も市場の拡大が見込まれる。電子商取引には物品取引とは違った特有の取引形態があるため、同分野独自のルールによって、取引の円滑化を図る必要がある。この分野では、電子商取引のための環境・ルールを整備する上で必要となる原則、例えばデジタル・プロダクトに対する関税、無差別待遇、自由な情報流通等、電子商取引の環境を整備するためのルールについて議論されている。

 
(スペイン語訳)
 En los últimos años, el mercado del comercio electrónico está creciendo rápidamente, y se espera que crezca más. Teniendo en cuenta que hay una forma específica de transacción diferente de la de bienes, es preciso facilitar el comercio con sus propias normas. En este capítulo, se negocia sobre los principios necesarios para desarrollar el entorno y las normas para el comercio electrónico, por ejemplo, derechos de aduana sobre los productos digitales, el trato no discriminatorio, y una libre distribución de la información.

 
(解説)
 電子商取引は比較的新しいタイプの貿易なので、WTOを含めて、電子商取引を律するマルチの条約は未だ存在せず、個別のFTA/EPAの中で定められていることもある、というのが現状である。WTOでは閣僚会議の宣言という形で、電子送信に関税を賦課しないという慣行を続けることとされているが、ケースごとに詳細な取り扱いを決めていくとなるといろいろな議論が出てくる。例えば、音楽を電子送信でダウンロードした際に関税をかけないとして、同じ音楽をCDの形で輸出した際(CDは明らかに物品なので)関税をかけるのか、といった議論である。

2014年10月29日水曜日

今日のスペイン語(216)  ストレステスト

 欧州では民間銀行の強靭性を確かめるために、かねてからいわゆるストレステストを実施している。本年のテスト結果が発表されたので、これを機に関連用語を覚えよう。

(日本語)
 10月26日、欧州中央銀行は、ユーロ圏の民間銀行130行に対する資産査定とストレステストの結果を発表した。不合格となったのは25行で、欧州銀行監督機構(EBA)によると、イタリアで9行、ギリシャで3行、キプロスでの3行が目立っている他、銀行経営が健全と言われていたドイツでも、1行が不合格となった。

(スペイン語)
 El 26 de octubre el Banco Central Europeo (BCE) presentó el resultado de la evaluación de los activos y de las pruebas de estrés para 130 bancos privados en la zona del Euro. Según la Asociación Bancaria Europea(EBA), de los 25 bancos suspendidos, destacan Italia con nueve suspendidos, Grecia y Chipre con tres cada uno. En Alemania, cuya administración bancaria se consideraba sana, también hay uno suspendido.

 
(解説)
1 「ストレステスト」は既に日本語になっているが、もともと、モノやシステム設計時の条件を上回る負荷(ストレス)を加えて、その際の安全性・信頼性を評価する手法。例えば原発のストレステストもあるが、リーマン・ショック後に米国の金融規制当局がストレステストを行ってからは、主として金融機関のテストを指すことが多い。具体的には、「経済成長率がマイナス5%」、「通貨相場が10%上昇」、「国債価格が30%下落」等、金融機関に厳しい仮定を設け、その結果として自己資本比率等が基準内に収まるかどうかを判断する。

2 今回のストレステストの結果については、ユーロ圏各紙が詳細に報じているが、130銀行の点数については、例えばEl Paísのページ(http://elpais.com/elpais/2014/10/26/media/1414356009_392338.html)が分かり易い。

3 ストレステストの「不合格」は、学校の試験の成績と同じくsuspendidoが使われる。

2014年10月28日火曜日

今日のスペイン語(215) TPPの交渉分野 その13


(13)サービス(電気通信):  Telecomunicaciones


(日本語)
 電気通信サービス提供通信インフラへの接続ルールを整備し、新興国において新規参入を容易にすれば、TPP域内で安価で質の高い電気通信サービスの提供が可能となる。この分野では、通信インフラを有する主要な電気通信サービス提供者の義務等に関するルールが議論されている。

 
(スペイン語訳)
 Si se llegan a establecer reglas de conexión a la infraestructura de comunicación para los proveedores de servicios de telecomunicaciones, y así se facilita la entrada de nuevos participantes en los países emergentes, se posibilitará proporcionar los servicios de telecomunicaciones de alta calidad a un bajo costo en la región del TPP. En este capítulo, se discuten principalmente normas sobre las obligaciones de los principales proveedores de servicios de telecomunicaciones que posean una infraestructura de comunicación.
 
(解説)
 電気通信サービスも、その特殊性故にWTOGATSそのものに加えて交渉が行われ、1997年2月に電気通信サービスに関するGATSの付属書が合意され、これが既存の基本的な国際ルールとなっている。TPP交渉においては、通信インフラへの公平なアクセス、既存通信設備への第三者による設備設置、相互接続、周波数の割り当て等における共通ルールが議論の対象となっている由である。

 

2014年10月27日月曜日

今日のスペイン語(214)  TPPの交渉分野 その12


(12)サービス(金融サービス):Servicios Financieros

(日本語)
  国境を越える金融分野のサービスの提供について、この分野特有の定義やルールを定める。具体的には、ルール(透明性,内国民待遇,最恵国待遇、新しい金融サービスの公正な扱い、投資保護、国家と投資家の間の紛争解決(ISDS)手続の適用等)と市場アクセスに関する議論が行われている。
 
(スペイン語訳)
  Se determinarán, en este capítulo, las reglas y definiciones específicas en el sector de servicios financieros para la prestación de servicios transfronterizos. En concreto se negocia sobre las normas (transparencia, trato nacional, trato de la nación más favorecida, trato justo de los nuevos servicios financieros, protección de la inversión, aplicación de los procedimientos de resolución de conflictos entre los estados y los inversores(ISDS)) y sobre el acceso al mercado.

 
(解説)
 金融サービスについては、前述のGATSの付属としての金融了解があり、その中で投資家や預金者、保険契約者の保護、金融システムの安定性確保等、信用秩序維持に関して規定されている。
 余談だが、この交渉が妥結した1997年12月、別の交渉案件でジュネーブに出張していた私は、連日連夜、日本の金融サービス交渉チームの奮闘振りを目にして、交渉の凄まじさを身近に感じたのを記憶している。

2014年10月26日日曜日

今日のスペイン語(213)  TPPの交渉分野 その11


(11)サービス(一時的入国): Entrada Temporal

(日本語)
 ビジネスマンがTPP域内諸国に入国、滞在できると確信していれば、安心して貿易・投資等の経済活動を行うことができる。そこで、貿易・投資等のビジネスに従事する自然人の入国及び一時的な滞在の要件や手続等に関する議論が行われている。

 
(スペイン語訳) 
  Si los empresarios están seguros de que pueden entrar y permanecer en los países contratantes del TPP, pueden dedicarse a sus actividades del comercio e inversión sin preocupación. Por ello, se negocia actualmente sobre los requisitos y los procedimientos necesarios para la entrada y estancia temporal de las personas físicas que realicen negocios de comercio e inversión.

 
(解説)
 サービス貿易に関わる人の一時的入国とは、短期商用出張、企業内転勤、投資家やサービス提供者等の一時的滞在や入国を言う。いわゆる単純労働者の移動は、貿易とは関係ない話題であり、TPPでも議論されていない由である。

2014年10月25日土曜日

今日のスペイン語(212)  TPPの交渉分野 その10


(1 0)サービス: Servicios

(日本語)
 自由で公正なサービス産業のマーケットを構築することは、サービス産業の海外展開を促進するとともに、途上国の国民の生活水準の向上にもつながるものである。 そこで、国境を越えるサービスの提供(サービス貿易)に対する無差別待遇や数量規制等の貿易制限的な措置に関するルールを定めるとともに、市場アクセスを改善する議論が行われている。

 
(スペイン語訳)
La construcción de mercados libres y justos para la industria de servicios no solo promueve la expansión en el extranjero de la industria, sino también conduce a la mejora del nivel de vida de los habitantes de los países en desarrollo. Así, se discute sobre las normas relativas al tratamiento no discriminatorio para la prestación de servicios transfronterizos y las medidas restrictivas al comercio como las limitaciones quantitativas, así como la mejora del acceso al mercado.

 
(解説)
 サービス貿易というのは、ワインや自動車のようなモノの貿易ではなく、金融、運輸、通信、建設、流通等いわゆるサービスの国際取引のこと。サービス貿易に関する既存の国際的な枠組みとしてはWTOのサービス貿易協定(GATS)がある。サービス貿易の自由化という時、通常、内国民待遇、最恵国待遇、参入への量的制限(例えば店舗や従業員数)の撤廃、特定の要件(例えば役員の大多数を現地国籍とすべし等)の撤廃などがあげられる。

 

2014年10月24日金曜日

今日のスペイン語(211)  矛盾する諺 その2


3 リスクをとるか、安全策か

"El que no arriesga, no gana.”
「虎穴に入らずんば虎児を得ず。」
                      対
“Más vale pájaro en mano que ciento volando.” 「百羽の飛ぶ鳥より手にした1羽。」

飛ぶ鳥を捕まえるのは難しい。現代風に言えば、ハイリスクハイリターンの商品よりも安全確実な投資をしなさい、という勧めだろうか。微妙に違うけれど、「とらぬ狸の皮算用。」にも通じる発想である。

 
4 ツーストライク、さて3球目は?

"No hay dos sin tres."
2度あることは3度ある。」
                      対
"A la tercera va la vencida.”
3度目の正直。」

 2回失敗しても、3度目に頑張れば本望成就に至る、という前向きの教訓である。

 
5 いつやるか?

"No dejes para mañana lo que puedas hacer hoy.”
「善は急げ。」 「巧遅は拙速に如かず。」「今でしょ。」
                      対
Ve despacio si tienes prisa.”
「急がば回れ。」

また、やむを得ない事情で仕事を手っ取り早く片付けられなかった方には、次の諺もある。

“Más vale tarde que nunca.”
「遅くても、やらないよりまし。」

2014年10月23日木曜日

今日のスペイン語(210)  エボラ対策

 米国やスペインでエボラ出血熱の二次感染が問題になっている。仮に今後世界中に広がり、日本にも上陸してきたら、国民生活、経済、安全保障に大きな影響が出るだろう。そうなった時のことを想定して、ここでは特に基本的人権とあり得べき各種措置との葛藤をネタに、問題提起をしてみた。スペイン語の上級者は、これを参考にして、スペイン語圏の友人と議論してはどうだろうか。

(スペイン語)

En una sociedad democrática como la nuestra, los derechos individuales y las libertades civiles merecen respeto absoluto, pero con la propagación de una amenaza particularmente peligrosa, pienso que deberían tomar medidas excepcionales. ¿Por qué no considerar lo siguiente de antemano?:

1.   Privacidad
 Cuando hablamos de la fiebre hemorrágica del Ébola, una enfermedad que mata al 70 por ciento de los infectados, el rastreo de contactos es la clave para detenerla. ¿Qué otra cosa se puede hacer para alertar a los vecinos que pudieron haber tenido contacto con la persona infectada, si no se libera su identidad?


2.   Cuarentena
 Si las personas que han tenido contacto cercano con el paciente (médicos, enfermeras,...etc.) toman trenes, caminan tranquilamente por la calle, estrechan manos y transmiten la epidemia a miles de otras personas, ¿qué va a pasar? ¿Sería excesivo restringir el movimiento de los médicos y enfermeras para que no propaguen la epidemia?

 
3 Evacuación
 Los pacientes querrán ser tratados en hospitales cerca de su casa, pero esos hospitales no tienen la experiencia, la capacitación, el entrenamiento y el equipamiento adecuado, y pueden cometer errores como hemos visto en los Estados Unidos y España. ¿No debería ser evacuado de su pueblo a unos centros de aislamiento especializado, donde por lo menos saben cómo prevenir el contagio?


4.   Prohibiciones de viaje
 British Airways ya ha cancelado todos los vuelos a los países afectados en el África occidental.  ¿No se podría prohibir el movimiento de personas a/de los países infectados con una excepción para los trabajadores de la salud, que contratarían sus vuelos y se monitorearían sus movimientos hasta 21 días después de su regreso a casa?

 
(日本語)
 私たちの民主主義社会では、個人の権利と市民的自由は絶対的に尊重されている。しかし、特に危険な脅威に直面した場合には、異例の措置を採らなければならないだろう。前もって、次のことを考慮しておくべきではなかろうか?:

1プライバシー
 感染者の70%が死に至るエボラのような病気を止める鍵は、接触者の追跡である。感染者と接触したかもしれない人々に警告することである。そのためには、感染者の氏名を公表する以外の手はあるのだろうか?

2 検疫(関係者の移動制限)
 患者と密接な接触をした人(医師、看護師等)が電車に乗り、普通に道を歩き、人と握手し、そして病気を蔓延させたらどうなるのか? このような医師や看護師の移動を制限するのは、やり過ぎだろうか?

3 強制的隔離
 患者は自分の家の近くの病院で治療を受けたいものだが、これらの病院では、適切な経験も訓練も機器もなく、米国とスペインで起こったように、間違いを犯す可能性がある。患者を居住地から、少なくとも感染防止の可能な専門の隔離施設に強制的に移動させることはできないのだろうか? 

4 旅行の禁止
 ブリティッシュ·エアウェイズは、西アフリカの感染国への/からの全てのフライトをキャンセルした。感染国との間で人の移動を原則として禁止し、同時に保健医療従事者のみ、チャーター便での移動と帰国後21日間の監視を条件として例外扱いすることはできないのだろうか。

 
(解説)
 エボラ出血熱というと、米国の小説家Tom Clancy Executive Orders邦題合衆国崩壊、1996年)が思い起こされる。エボラ・ウィルスがまき散らされる話で、エボラの怖さと究極の対策が鮮烈に描かれている。通常の方法では蔓延を防ぐことが出来ず、またインフルエンザと違って予防策がないことから、尋常ならざる対策を取らざるを得ないというストーリーである。ペーパーバックで700ページ以上の長編だが、一気に読み通させる迫力を持つ作品だった。

エボラが他人事ではなくなった米国では、毎日のように、どうやってエボラに立ち向かうべきかという論調が紙面を賑わせている。本項は、それらを参考にして、究極の場合に予想される具体的な措置を掲げ、広く議論してほしいと考えたものである。

エボラ出血熱については、8月6日にアップした「今日のスペイン語(142) エボラ出血熱」もご参照願いたい。

2014年10月22日水曜日

今日のスペイン語(209)  矛盾する諺 その1

 以前このブログで、スペイン語の諺を学ぶ意義について紹介した。(5月8日にアップした今日のスペイン語(48)) 今日はその続きで、諺が常に正しいわけではないという話。諺はあくまで庶民の語り継いできたdicho popularであって、真実や英知の表象とは限らない。日本語でもスペイン語でも、正反対の教訓や矛盾するガイダンスを説く諺が沢山ある。スペイン語版の矛盾する諺をいくつか選んでみた。貴方なら、どちらの諺を頼りにするだろうか。

 
1 殴られたらどうするか

"Ojo por ojo, diente por diente."
「目には目を、歯には歯を。」(ハムラビ法典)
                    対
"Si te pegan en una mejilla, pon la otra."
                 または
“A cualquiera que te abofetee en la mejilla derecha, vuélvele también la otra.”
「だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい。」(新約聖書:マタイによる福音書第5章)

 イエスは、その説教の中で、「目には目を」と言うけれど、自分は違う考え方であるとして、この有名な教訓を説いたとされている。

 
2 早起きの効果

"A quien madruga Dios le ayuda.
「早起きは三文の得。」
                     対
"No por mucho madrugar, amanece más temprano."
「早起きしたって、早く夜が明ける訳ではない。」

 この諺を突き詰めて考えると、朝早くから頑張っても意味がないので、「果報は寝て待て。」になる。

2014年10月21日火曜日

今日のスペイン語(208)  TPPの交渉分野 その9


(9)競争政策: Política de Competencia

(日本語)
 カルテル等の反競争的措置により、貿易・投資の自由化で得られる利益が害されてしまう。特に国有企業が経済活動の大きな部分を占める諸国では、国有企業に対して政府による過度のサポートがあると民間企業との間で対等な競争条件が確保されなくなってしまう。そこで、貿易・投資の自由化で得られる利益が、カルテル等により害されるのを防ぐため、競争法・政策の強化・改善、政府間の協力、国有企業と民間企業との競争条件等に関する規律等について議論されている。

 
(スペイン語訳)
 Medidas anti-competitivas como los carteles hacen daño a los beneficios que se deberían obtener por la liberalización del comercio e inversión. Un apoyo excesivo del gobierno para las empresas estatales afecta negativamente a la igualdad de condiciones de competencia con el sector privado, en particular en los países donde las empresas estatales representan una gran parte de la actividad económica.

 Por eso, se negocia sobre el fortalecimiento y la mejora de la legislación y política de competencia, la cooperación intergubernamental, y la disciplina de las condiciones de competencia entre las empresas estatales y las privadas, con el fin de evitar que los beneficios que se obtienen por la liberalización del comercio y la inversión se vea afectado por el cartel.

 
(解説)
 競争政策は、基本的には各国が競争法(日本では独占禁止法)や政府の規制改革の枠組みの中で行われている。マルチの世界ではWTO協定発効後に検討が行われてきた経緯があるが、現在はかばかしい進捗は見られていない。公平・公正な競争条件の確保は、市場メカニズムが正しく機能するための必要条件であり、TPPで適切な規律が出来ることが期待されている。