2014年6月5日木曜日

今日のスペイン語(80)  ホアンカルロス語録 その2


  前回に引き続き、退位を表明したホアンカルロス国王の名科白を紹介したい。

 

(日本語訳と解説)
「どうして君は黙っていられないのか?」だが、響きとしては殆ど「君、黙りたまえ」に等しい。

 2007年のイベロアメリカサミットがチリで開催された時のこと。ベネズエラのチャベス大統領がアスナール前スペイン首相等の批判を延々と展開し、サパテロ首相や議長であるバチェレ・チリ大統領の静止も聞かず、延々と罵詈雑言を続けたのに対して国王の発した一言。ベネズエラ大統領は、この言い方が植民地主義的であるとして、スペインとベネズエラの関係は一時微妙になったが、この発言はスペイン語圏でとても広く知られるようになった。スペインでは、流行歌の歌詞になったり携帯電話の着メロにも使われる程だった。

 私もニュースやYouTubeで何回もその場面を見たが、チャベス大統領以外は、皆不機嫌そうな顔付きで、じりじりしている様子がよくわかった。今でも“Por qué no te callas”でググると、何種類もの動画が見られる。スペイン語習得のためにも、是非ご覧いただくことをお薦めする。前後の文脈に照らしてみると、「サパテロ首相のみならず議長からあれだけ注意され、議事進行への協力を求められているのに、どうして黙っていられないのか?」というニュアンスが強くなり、「植民地の被支配者に対する命令」のような失礼な物言いではない、という意見も多い。なお、その当時、一部には一国の大統領に話しかけるのに、“usted”を使わず tutearで呼びかける)のが失礼である、との批判もあったが、国王は普段からこれら各国の首脳とはtutearしている由であり、そうであればこの批判は当たらない。先日の乾杯発声の項を参照願いたい。

 

"Toda España lloró con rabia y dolor, de forma unida y solidaria, a sus ciento noventa y dos ciudadanos que tan brutalmente perdieron la vida".

(日本語訳と解説)
「スペイン中が、残虐に命を奪われた192人の市民を思い、怒りと苦悩を以て、団結し連帯して涙を流した。」

 2004年3月11日マドリードで起きた同時多発テロ事件後の国王の言葉。多くのスペイン人の気持ちを代弁するものだったと思う。


"Seguiré dando guerra mientras el cuerpo aguante".
 
(日本語訳と解説)
「体がもつうちは、これからも手を焼かせるぞ。」

2005年11月、国王となって30周年の機会の発言。dar guerraというのが、言うことを聞かない子供が「手を焼かせる」とか「人を困らせる」という意味で使われる。ホアンカルロス国王は、かねてから、予定を外れた行動をする等、周囲の者が心配することが多かったことを踏まえた発言。冗談好きの国王らしい物言いである。

 
"Lo siento mucho, me he equivocado; no volverá a ocurrir".

(日本語訳と解説)
「申し訳ない。私は過ちを犯した。二度とこのようなことはしない。」

 2012年、某女性とボツワナに出かけて象狩りをし、腰の怪我をしたことが発覚した際の謝罪の言葉。

 

―“Hoy merece pasar a la primera línea una generación más joven, con nuevas energías, decidida a emprender con determinación las transformaciones y reformas que la coyuntura actual está demandando y a afrontar con renovada intensidad y dedicación los desafíos del mañana.”

「今や、新たな活力を持ち、現状が求める変革や改革に確固として取り組み、未来の挑戦に対して懸命に身を捧げて立ち向かう若い世代に、主役を譲るのがふさわしい。」

(日本語訳と解説)
2014年6月3日、退位の趣旨を自ら説明する演説より。

 

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