2014年6月5日木曜日

今日のスペイン語(79)  ホアンカルロス国王語録 その1

 6月2日に退位を発表したスペインのホアンカルロス国王は、1975年に国王となって以来、数々の名科白を残してきた。それらの名言はあまりにも有名なので、「サビ」をちょっと呟くだけで、スペイン人には直ぐわかる。ほんの少しだけ紹介したい。

(日本語訳と解説)
「本日、スペインの新たな歴史が始まる。」

  1975年11月22日、フランコ総統により次期元首として指名されていたホアンカルロス皇太子は国王となった。国王として最初に行った演説中のフレーズ。フランコ体制中のスペインは、形式的には王政だったが王はおらずにフランコ総統が全て仕切る一方、彼は若きホアンカルロスを次期国王に指名していた。だから75年11月20日のフランコ総統死去の後ホアンカルロスが国王となったのは、既定路線ではあったものの、皆にとって、海図なき航海への旅立ちであった。ホアンカルロス新国王は、“una nueva etapa”という言葉に並々ならぬ決意を込めていたのであろう。

 
(日本語訳と解説)
「祖国の永続と統一の象徴である国王として、スペイン国民が国民投票を通じて定めた憲法の規程する民主化プロセスを、力によって遮らんとする行動は、決して容認できない。」

1981年2月23日、首相交代を審議する下院の議場に一部の軍人(治安警備隊)が乱入して銃をぶっ放す場面を、テレビ中継でご覧になった方も多いと思う。国政を預かる首相以下閣僚、議員達が皆議場に閉じ込められる中、国王が軍服をまとってテレビに登場し、スペイン国民と世界と、そしてクーデターの首謀者達に対して、クーデターを決して容認せず、との決意を表明したおかげで、スペインの民主的制度は救われた。

 
(日本語訳と解説)
  「我々の言語(スペイン語)は、他者に押し付けた言語ではなく、出会いの言語であった。誰に対しても、スペイン語を使うよう強制されたことは決してなかった。多様な人々が、自らの自由な意思によって、セルバンテスの言葉を選んだのである。」

 2001年の4月23日、スペイン語圏最大の文学賞であるセルバンテス賞授与式典における演説である。(この賞については4月23日付けの本ブログを参照願いたい。) かなりpolémicoな発言であった。

 
―“Alzo esta copa para brindar... pero si los demás no tenéis copas...
(日本語訳と解説)
「それでは杯を上げて乾杯を......、あれ?皆さんにグラスが行ってない!?
 2005年のイベロアメリカ・サミットがスペインのサラマンカで開催された時、参加各国の首脳達を招いた国王主催の食事の席で起こった、ちょっとしたハプニング。主催者である国王が立ち上がって乾杯の挨拶をしようと喋り始めた時、まわりをみると未だ誰にもグラスが行きわたっていなかった時の発言。首脳が何十人も集まるような席では、全て抜かりなく準備され、グラスをサーブする係が素早く乾杯の準備を整え、進行係が国王に「乾杯の準備が出来ました。ご発声をお願いします。」と耳打ちする、という手筈だと思うが、時には上手くいかないこともあるらしい。


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